グリーンカフェ第5弾を開催しました。
10月8日(土)、 高知大学朝倉キャンパスにおいてグリーンカフェ第五弾を開催しました。
今回は、山下正寿さん(高知県太平洋核実験被災支援センター事務局長)をお迎えし、「ビキニと福島原発被災」と題した講演をしていただきました。山下さんは元教員で、約25年前から「幡多ゼミ」(幡多郡の高校で結成された自主的サークル。地域の現代史調査に取り組んできた)の活動を通じて、1954年に複数回行われたアメリカによる水爆実験で被災した高知県下のマグロ漁船乗組員の健康被害についての調査活動を行ってきた方です。
参加者は22名(うち7名が会員外の参加者)と少ないながらも、約2時間30分にわって内容の濃い講演と活発な質疑が行われました。DVD「わしも死の海におった」(南海放送制作)も紹介されました。
講演内容は多岐にわたりましたが、とくに筆者の印象に残ったのは以下の点です。
山下さんは、福島第一原発事故による被害について考える際に、「ビキニ事件」での被害とくに内部被曝による影響を関連づけて考える必要があるとしていました。
山下さんは、政府が福島第一原発事故による放射能汚染の被害を「過小評価」しそれゆえに対策が後手にまわっているとしていました。そのようなことが起こる理由として、過去に起こった放射能汚染による被害の全容が解明されていないからとしています。たとえば「ビキニ事件」では被害の全容が明らかになる前に日米両政府が政治決着をしてしまい、わずかな賠償金を被災者(実際は船員すべてにわたることは無かった)に渡すことで早々に「過去の事件」「終わってしまったこと」として処理されてしまいました。そのために十分な調査も行われず、結局、高知の被災船員は、後々に現れた自身の健康被害をもって「告発」せざるを得なかったと述べられました。
被災船員の健康被害は、がんをはじめとする様々な病気となってあらわれたが、山下さんらの調査により、それらを引き起こしたほとんどの理由が放射能汚染された海水を浴びたり魚を食べたりするなどして起こった内部被曝であることが明らかになっています。今回の事故では、環境への放射能汚染が今も進行しつづけており、その被害は甚大なものとなることが予測されています。山下さんは、とくに海洋汚染の深刻性を挙げて、食物連鎖で濃縮された放射性物質を取り込んだ魚が消費者の口に入ることによって引き起こされる内部被曝の拡大について、強い懸念を表していました。
山下さんの言葉のひとつひとつが長年にわたって集められたデータに裏付けられたものであり、その「警告」には重みがありました。筆者は、この「警告」を真摯に受け止め、今回の事故による被害の拡大を少しでも防がなくてはならない、と思いました。そのことは、調査に関わった高校生や、貴重な証言をした被災者や関係者の労苦に報いることにもなると思います。そして、高知の船員達に起こった被害と同じことを、とくに福島の子供たちに起こしてはならないと改めて強く感じました。
そのほか、山下さんは、「幡多ゼミ」が行った調査活動の経験から、フィールドワークの重要性を指摘されました。たとえば、食品の放射能汚染については市民が直接計測すべきこと、あるいは行政などの検査の場に立ち会い監視することが重要であることなど、今後の活動の参考になることを多々教えていただきました。
山下さんらの調査活動は、アメリカ政府が公開した公文書の分析なども加えて今後も継続していくそうです。新たな知見を得られたときには再度お話を聞いてみたいと思いました。
(文責 オバタ)